へいしゃこう兵車行
車轔轔 馬蕭蕭
行人弓箭各在腰
耶嬢妻子走相送
塵埃不見咸陽橋
牽衣頓足攔道哭
哭声直上干雲霄
※日本で一般に読まれている本文によります。長編のため、有名な部分を抜粋して掲載しています。
書き下し文
車は轔轔 馬は蕭蕭
行人の弓箭 各腰に在り
耶嬢 妻子 走りて相送り
塵埃に見えず咸陽橋
衣を牽き足を頓し道を攔りて哭す
哭声 直ちに上りて雲霄を干す
現代語訳
兵車はがらがらと響き、馬はいななく。出征する兵はそれぞれ弓矢を腰につけている。父母や妻子が走って見送り、舞い上がる土ぼこりで咸陽橋も見えない。衣を引き足を踏みならし道を塞いで泣く——その泣き声はまっすぐ雲まで届く。道端の人が兵士に問うと、兵士はただ「徴兵がしきりだ」と答える。あるいは十五で北の黄河の守りに行き、四十になっても西で屯田させられる。村を出るときは里長が元服の頭巾を巻いてくれ、帰れば白髪になってまた辺境の守りへ。辺境の流血は海のようだというのに、皇帝は領土を広げる思いをやめない。……君は見たか、青海のほとりを。昔から白骨を収める者はいない。新しい鬼は恨み、古い鬼は哭き、空が曇り雨が湿って声が啾々と聞こえる。
原文と書き下し文の対照
車轔轔 馬蕭蕭 ― 車は轔轔 馬は蕭蕭
行人弓箭各在腰 ― 行人の弓箭 各腰に在り
耶嬢妻子走相送 ― 耶嬢 妻子 走りて相送り
塵埃不見咸陽橋 ― 塵埃に見えず咸陽橋
牽衣頓足攔道哭 ― 衣を牽き足を頓し道を攔りて哭す
哭声直上干雲霄 ― 哭声 直ちに上りて雲霄を干す
鑑賞
音と土ぼこりと泣き声で、出征の場面を映画のように描き出す冒頭。この後、兵士の口を借りて終わらない徴兵の苦しみが語られます。(冒頭部分の抜粋)
日本で親しまれる理由
徴兵の悲劇を描く
語句
- 轔轔
- 車の音
- 蕭蕭
- 馬のいななき
- 耶嬢
- 父と母
- 雲霄
- 大空
作者
杜甫の生涯と作品一覧は作者ページへ。
作られた背景
天宝年間、玄宗の対外戦争による徴兵を批判した社会詩とされる。